いびきと肥満

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  • いびき・無呼吸と肥満の関係

    睡眠時無呼吸症候群の原因は単一ではありませんが、上気道(咽頭)の狭小化が大きな要因になっています。 その狭小化には肥満に伴う咽頭周囲への脂肪沈着、扁桃肥大、小顎、下顎後退などが関係しています。

    この中で最も多いのは肥満であり、体重の増加に伴って症状が出現・増悪(いびきの増強、眠気の出現)する例が多いようです。

    肥満の有無は一般にBMI(体重kg÷身長m÷身長m)で判定されます(成人のみ適用可)。

    BMIは22が標準で、25以上が肥満とされています。 しかし肥満が関係しているかどうかはBMIだけで判定できるわけではなく、肥満が軽度でも咽頭周囲の脂肪沈着が強い場合もあり、 そのような場合は減量が有効である可能性があります。簡単には若い体調の良かったとき(たとえば20歳のとき) の体重からの変化が一つの参考になります。

    首周りや、ウェストのサイズも大変参考になります。体重は変わらないのに、運動不足のため手足の筋肉の量が減り、 首や腹部の脂肪が増え、それに平行してイビキや無呼吸が増悪するケースが見受けられます。

    ちなみに、米国で行われたウィスコンシン州職員対象の大規模疫学調査で、約4年間の体重の変化と無呼吸の重症度 (AHI=睡眠1時間当たりの無呼吸・低呼吸の回数)の変化との間には明確な関係があることが証明されています(下図)。



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    いびき・睡眠時無呼吸症候群の減量療法

    肥満の関与が大きい場合は、体重減量が根本的な治療になります。実際に体重減量のみで治癒する例があるのは事実です。 しかし睡眠時無呼吸症候群で眠気などの症状の強い例運づまず鼻CPAP療法などで症状をとって、平行して体重減量をはかることが大切です。 それは狭心症・心筋梗塞・脳梗塞などの合併症を予防するうえで必要であり、また食事・運動療法をスムーズに進める上でも大切なことです。

    減量療法の実際

    参考:食品カロリーの実例

    食品カロリー実例

    食品のカロリーを厳密に計算するのは、手間がかかり自分ではなかなかできません。 以下は、南福岡病院の栄養士が実際に計算したカロリーの例です。摂取カロリーを7000kcal減らすと体重が1㎏減ると考えられています。

    カレー(飯220g) チャンポン ラーメン ナポリタン
    530kcal 塩3g 567kcal 塩6.8g 548kcal 塩5.3g 524kcal 塩4.1g
    チキンカツサンド 焼き餃子 焼き鳥 鶏唐揚げ
    530kcal 塩3.8g 567kcal 塩2.8g 548kcal 塩2.1g 524kcal 塩2.4g
    ポテトチップス ミルクチョコ(70g) シュークリーム(90g) ショートケーキ(55g)
    84kcal 塩0.2g 389kcal 塩0.1g 259kcal 塩0.3g 187kcal 塩0.1g
    炭酸飲料(250ml) ワイン(150ml) ビール(250ml) 日本酒(180ml)
    98kcal 167kcal 150kcal 206kcal


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    体重減量の実例

    減量に成功して、CPAP療法が必要でなくなった典型的な実例を、ご本人(62歳、男性)のご快諾を得て、ここに提示します。このような例は決して 稀ではありません。

     

    [病歴]: 若い時からイビキは指摘されていて、結婚当初から無呼吸も気づかれていました。体重は20歳時68kg、30歳時80kgと 徐々に増加し、それに伴ってイビキが強くなり、朝起きるとノドが乾燥していて、 昼間は眠く、倦怠感、集中力の低下も自覚されていました。 高血圧の治療も受けていましたが血圧はコントロール困難でした。

    平成12年5月、南福岡病院を受診、睡眠ポリグラフの検査を受け、無呼吸低呼吸指数 39.3/時間で、閉塞性睡眠時無呼吸症候群と 診断されました。

    治療前の睡眠ポリグラフ(10分間)

    同年6月からCPAP(圧7cm)を開始され、眠気は無くなり、血圧もコントロール可能になりました。

    さらに、T.K.さんは体重を減量してCPAPを中止することを希望され、減量に取り組むことを決意されました。

    [減量の経過]: 開始前は、身長 169cm、体重 85kg、BMI 30.1でした。栄養指導を受け、従来1食500gの米とそれに加えてパン、 餅など大量に食べていた炭水化物を、米200gだけに減らすこと、会合で大食した時は、その後その分の食事を減らすことなどを、 ”心に誓いをたてて”実行されました。T.K.さんはクリーニング業を営んでおられて、もともと身体活動量は多く、特に運動を付加することは されませんでした。

    H12.5.25 H13.1.17 H13.8.8
    CPAPなし使用なし
    体重85kg75kg74kg
    BMI30.126.526.2
    熟眠感なし時々毎日
    日中の眠気(++)(±)(-)
    眠気スコア920
    無呼吸低呼吸指数39.39.8

    T.K.さんはこのような着実な実践を続けられ、1年後、約10kg減量した時点で、鼻炎のためCPAPを中止してみたところ、家族から、 イビキが無いと言われ、2ヶ月余りCPAPを中止、睡眠ポリグラフを調べたところ、無呼吸低呼吸指数 9.8/時間で、眠気も全く感じない とのことで、以後CPAP中止となりました。

    減量後の睡眠ポリグラフ(10分間)


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    どれ位の減量で無呼吸症が治るか?

     

    少しデータが古いのですが、平成11年時点の集計結果を紹介します。
    564 名に CPAP を導入し、そのうち 147名(26%)が途中中止となっています。中止例のうち体重減 量により無呼吸が改善して中止したのが 36名(6%)、 マウスピースへの変更が 44名(8%)、手術による改善が 5名(1%)でした。体重減量による中止例の平均像は図に示すように、初診時の体重の-15%、 BMIが 25 をわずかに下回る程度でした。一般的には健康増進のためには 5%の体重減量が1つの目安とされており、15%の体重減量は容易とは言えません。 適度の体重減量と CPAP継続がむしろ大多数の患者さんの経過であり、医学的にもそれで心血管障害を防止できることが証明されています

    体重の変化とCPAP中止


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